令和7年度 とうきょう すくわくプログラム 活動報告①
テーマ「生きる力を大地から」
テーマの設定理由 :
当園には畑や小さい果樹園、プールで作った田んぼがあり、こどもたちは季節ごとに変化する植物や実の成長に強い関心を示しています。「芽が出た!」「大きくなった!」「見たことないくらい甘い!」と、五感をフルに使い観察する姿から、自然と命のつながりを探ろうとするこどもの姿が見られます。そこで、畑での野菜作りや田植え、果樹園での収穫、収穫物の給食提供を通して、「食べ物は大地から生まれ、わたしたちの生きる力になっている」という学びを深めたいと考えました。園の環境を活かし、こどもの「食と命」に対する興味を広げるテーマとして設定しました。
環境設定と準備
<菜園・田んぼ・果樹園の整備>
園庭や畑では土づくりから行い、野菜や果樹が生長しやすい環境を整えました。屋上にはプールを活用した田んぼを設置し、田植えから稲刈り、脱穀、籾摺りまで、一連の米づくりを体験できる環境を整備しました。また、柿や晩白柚などの果樹や季節の草花にも日常的に触れられるよう環境を整え、多様な自然との出会いを大切にしました。
<発達に応じた栽培環境の設定>
各クラスの発達や興味に合わせて栽培する野菜や植物を選定し、子どもたちが毎日観察や世話を行える場所へプランターや鉢を設置しました。子どもが「昨日と違う」「大きくなった」と小さな変化に気付けるよう、生活の中で自然に目に入る環境づくりを心掛けました。
<素材・道具の準備>
スコップ、ジョウロ、長靴、収穫かご、ハサミ、観察用のスケッチ帳などを準備し、苗植え、水やり、観察、収穫まで、子どもたちが主体的に活動へ参加できるようにしました。また、野菜や植物の写真、絵本、実物などを取り入れ、生長後の姿をイメージしながら活動に期待をもてるよう工夫しました。
<「問い」が生まれる環境づくり>
活動前後には、写真や実物を提示したり、前回の様子と見比べたりできる環境を整え、「どこが大きくなったかな」「昨日と何が違うかな」「どんな野菜になるかな」と自然に問いが生まれるよう工夫しました。保育者は子どもたちのつぶやきや気付きを丁寧に受け止め、それらをクラス全体で共有することで、一人の発見が友達との対話や新たな探究へとつながる環境づくりを大切にしました。
<活動の内容と子どもの姿・声 >
「生きる力を大地から」をテーマに、子どもたちは野菜や植物との関わりの中で、自ら問いをもち、観察や収穫を通して探究を深めました。
保育者は「どんな野菜になるかな?」「どこが大きくなったかな?」などの問いを大切にし、一人ひとりの気付きやつぶやきを受け止めながら活動を展開しました。子どもたちは友達や保育者と発見を共有し、対話を重ねながら学びを広げていきました。 以下、四季を通した子どもたちの探究の様子を紹介します。
~春の活動 ~「小さな命との出会い」
春(4~6月)
ほし組(2歳児)
• 4月 オクラ・ミニトマトの苗植え
• 6月 枝豆の収穫・喫食
• 6月 ミニトマトの収穫・喫食
ルナ組(3歳児)
• 4月 きゅうり・ゴーヤ・かぶ・里芋の苗植え
• 7月 野菜の収穫
ソル組(4歳児)
• 4月 ナス・オクラ・ズッキーニ・シシトウ・スイカの苗植え
• 5月 ナスの収穫
• 6月 ナス・きゅうり・ズッキーニ・ミニトマト・ペピーノの収穫
ポラリス組(5歳児)
• 4月 スイカ・いちご・じゃがいも・さつまいもの苗植え
• 5月 さつまいもの苗植え・いちごの収穫
• 6月 田植え・じゃがいもの収穫
春は、各クラスで苗植えや種まきを行い、「育てる」ことから菜園活動が始まりました。
ほし組ではオクラとミニトマト、ルナ組ではきゅうり・ゴーヤ・かぶ・里芋、ソル組ではナス・きゅうり・ズッキーニ・シシトウ・スイカ、ポラリス組ではスイカ・じゃがいも・さつまいも・いちご・稲など、それぞれの年齢に応じた野菜や作物を育て始めました。
活動では、「どんな野菜になるかな?」「お水をあげるとどうなるかな?」「大きくなるかな?」という問いを大切にしながら、子どもたちと苗や種を植えました。
ほし組では、「トマトだ!」「はやくたべたい」「おおきくなあれ」と、苗に優しく声を掛けながら水やりをする姿が見られました。毎日世話をすることで、「葉っぱが出てきた」「昨日より大きいね」と小さな変化にも気付くようになりました。
ルナ組やソル組では、「芽はいつ出るかな」「葉っぱが増えたね」と友達同士で発見を伝え合い、ポラリス組では接ぎ木苗を見て「どうしてつながっているの?」という疑問が生まれました。保育者はすぐに答えを伝えるのではなく、「どうしてだと思う?」と問い返し、「もっと丈夫になるためかな」「大きくなるためじゃない?」と子どもたちなりに考える姿を大切にしました。
また、田植えでは「お米はどこにできるのかな?」という問いから活動が始まり、「土が気持ちいい」「早くご飯になってほしい」と、自然や命への興味を広げる姿が見られました。
~夏の活動 ~「見つけた!できた!収穫の喜び」
田植え(5歳)
ほし組(2歳児)
• 7月 きゅうり・トマトの収穫
• 7月 白オクラ・赤オクラ・オクラ・ミニトマトの収穫
• 7月 オクラの水やり
• 7月 赤オクラ・白オクラ・オクラの収穫
• 8月 オクラ・ミニトマトの水やり
• 8月 オクラの収穫(複数回)
ルナ組(3歳児)
• 7月 野菜の収穫
• 8月 野菜の収穫・観察画
ソル組(4歳児)
• 7月 ナス・きゅうりの収穫
• 7月 トマトの水やり
ポラリス組(5歳児)
• 7月 ミニトマトの収穫・観察
• 7月 野菜の観察・収穫
• 8月 ぶどうの収穫
• 8月 スイカの収穫
毎日の水やりや観察を続ける中で、野菜は少しずつ実をつけ、いよいよ収穫の季節を迎えました。
ほし組では枝豆・ミニトマト・きゅうり・オクラ、ルナ組ではきゅうり・かぶ、ソル組ではナス・きゅうり・ズッキーニ・ミニトマト・ペピーノ、ポラリス組ではミニトマト・ぶどう・スイカなど、多くの野菜や果物を収穫しました。
収穫前には、「どれが食べ頃かな?」「どっちが大きいかな?」「なんで赤くなったのかな?」「今日は何個あるかな?」「さわるとどんな感じかな?」と問い掛けながら観察を進めました。
ほし組では、「チクチクする!」「重たい!」「曲がってる!」「お豆が入ってる!」と、野菜を実際に触ることで手触りや重さ、形の違いを楽しんでいました。また、「なんで毛があるの?」「赤いオクラもある!」と、不思議に思ったことを保育者へ伝える姿も見られました。
ルナ組では「とれたよ!」「みて!」と収穫した喜びを友達と共有し、ソル組ではズッキーニやペピーノなど普段あまり見慣れない野菜を見比べ、「きゅうりみたい」「でも違うね」と違いを発見していました。
ポラリス組では、「まだ緑だから待とう」「こっちのスイカは大きいよ」と、自分たちで収穫のタイミングを考える姿も見られ、育てる経験が観察する力へとつながっていました。
自分たちで育てた野菜を味わうことで、「おいしい」「また育てたい」という声も聞かれ、食への関心も高まっていきました。
~秋の活動~「育つ理由を考える」
ほし組(2歳児)
• 9月 オクラの収穫
• 10月 そら豆の種まき
• 10月 そら豆の苗の植え替え
ルナ組(3歳児)
• 9月 人参の種まき
• 10月 人参の観察
• 10月 チューリップの球根植え・小松菜の種まき
• 10~11月 人参・小松菜・チューリップ・里芋の観察
• 11月 人参の間引き
• 11月 里芋・晩白柚の収穫
ソル組(4歳児)
• 9月 じゃがいもの植え付け
• 10月 じゃがいもの芽かき
ポラリス組(5歳児)
• 9月 ミニ大根の種まき
• 10月 稲刈り
• 10月 土寄せ
• 10月 さつまいもの収穫
• 10月 脱穀
• 10月 籾摺り
秋は、新たな種まきや植え付けとともに、収穫まで時間をかけて育てる作物にも取り組みました。
ほし組ではオクラの最後の収穫を終えた後、そら豆の種まきと苗の植え替えを行いました。ルナ組では人参・小松菜・チューリップ、ソル組ではじゃがいも、ポラリス組ではミニ大根・稲・さつまいもなどを育てました。
活動では、「芽はどこかな?」「どんな芽が出るかな?」「先週とどこが違うかな?」「どこが大きくなったかな?」という問いをもちながら観察を続けました。
ほし組では、『そらまめくん』の絵本を読んでから種を観察すると、「大きい!」「変な形!」「かたいね」と驚きの声が上がりました。「どんな芽が出るかな?」という問いに、「大きくなる!」「葉っぱが出る!」と期待を膨らませ、「土のお布団をかけよう」と優しく土をかぶせる姿が見られました。苗へと生長すると、「ぼくのそら豆!」と愛着をもって世話を続けていました。
ルナ組では、「葉っぱが増えた」「芽が出てる!」と毎週の変化に気付き、ソル組では「どうして芽を取るの?」という問いから芽かきの意味を知りました。
ポラリス組では、稲刈り・脱穀・籾摺りまでを経験し、「こんなに大変なんだ」「少ししかお米にならないね」と、食卓へ届くまでの過程を実感する姿が見られました。
~冬の活動~「命をいただく・次へつなぐ」
ほし組(2歳児)
• (継続的な観察・水やり)
ルナ組(3歳児)
• 12~1月 小松菜・人参・チューリップの観察
• 2月 人参の収穫
• 3月 小松菜の収穫
ソル組(4歳児)
• 12月 じゃがいもの収穫
ポラリス組(5歳児)
• 2月 ミニ大根の収穫
冬は、一年間育ててきた野菜を収穫し、生長を振り返る季節となりました。
ルナ組では人参・小松菜、ソル組ではじゃがいも、ポラリス組ではミニ大根を収穫し、ほし組では秋に植えたそら豆の生長を継続して観察しました。
活動では、「どれを収穫したい?」「土を洗うとどうなるかな?」「どんな大きさかな?」「土の中には何個あるかな?」と問い掛けながら活動を進めました。
子どもたちは、「抜けた!」「大きい!」「まだある!」「土がいっぱい!」「きれいになった!」と、一つひとつの発見を嬉しそうに友達や保育者へ伝えていました。
また、「鳥さんが食べたのかな?」「お花も食べられるの?」など、収穫だけで終わらない新たな疑問も生まれました。
一年間を通して、子どもたちは「どうしてだろう?」という問いをもち、毎日の観察や世話を重ねながら、自分なりの考えを友達や保育者と共有し、自然や命への理解を深めていきました。
野菜を育てることは、食べ物を育てるだけではなく、命を大切にする心や、友達と喜びを分かち合う気持ち、最後まで関わり続ける力を育む活動でもありました。大地との豊かな関わりを通して得た数多くの気付きや感動は、子どもたち一人ひとりの「生きる力」につながる大切な経験となりました。
<振り返りと共有>
● 保育者
各クラスの担任が活動記録や写真、子どもたちのつぶやきや対話を持ち寄り、学年を越えて振り返りを行いました。「どのような問いが子どもの探究につながったのか」「どのような環境や援助が子どもの気付きや主体性を引き出したのか」を共有し、子どもの育ちを多角的に捉えながら、次の活動や環境構成へとつなげました。また、年齢ごとの発達に応じた学びの連続性についても確認し、園全体で「生きる力を大地から」というテーマを共有する機会となりました。
● 子ども
収穫した野菜や植物を観察したり、絵や制作で表現したりする中で、自分が感じたことや発見したことを友達や保育者と伝え合いました。「葉っぱが大きくなったね」「なんで赤くなるの?」「また育てたい」といった子どもたちの言葉からは、自然への興味や命への親しみ、育てる喜びが感じられました。また、自分たちで育てた野菜を調理・喫食する経験を通して、食材が育つまでの過程や、生き物の命をいただくことへの感謝の気持ちにも触れることができました。
● 発信
一年間の菜園活動は、写真や子どもたちの言葉、保育者の考察を添えた「菜園ドキュメンテーション」として園内に掲示するとともに、園のホームページでも発信しました。日々の探究の過程や子どもたちの成長を保護者や地域と共有することで、園と家庭が共に子どもの学びを見守り、育ちを喜び合える機会となりました。
保育者の気づき
・子どもたちは、保育者から答えを教わるのではなく、「なんで赤くなるの?」「どうして芽を取るの?」「どれが食べ頃かな?」など、自ら問いをもち、友達や保育者との対話を通して考えを深めていく姿が見られました。問いを共有することで、一人の気付きがクラス全体の探究へと広がっていく様子が印象的でした。
・野菜や草花の生長だけでなく、土や水、太陽、虫など、目には見えにくい自然の働きにも関心を寄せる姿が見られました。毎日の観察や世話を積み重ねることで、植物はさまざまな自然環境に支えられて育っていることを、子どもたちなりに感じ始めていました。
・収穫までの過程を丁寧に経験したことで、自分たちが育てた野菜への愛着が育まれました。収穫し、調理し、食べる体験を通して、「いただきます」の意味を実感し、食べ物は命をいただいていることや、多くの人や自然の恵みに支えられていることへの感謝の気持ちが育っていました。
・保育者自身も、子どもの小さな気付きやつぶやきを探究の出発点として捉え、「問い」を大切にしながら関わることで、活動がより豊かな学びへと発展することを改めて実感しました。また、子ども一人ひとりの発達や興味に応じて環境を整え、答えを急がず共に考える姿勢の大切さを再確認する機会となりました。
総括
「生きる力を大地から」をテーマに一年間取り組んだ菜園活動では、子どもたちは種や苗を植え、水やりや観察を重ね、収穫し、味わうまでの一連の過程を経験しました。その中で、「どうして育つの?」「なんで色が変わるの?」「どうして食べられるの?」といった素朴な問いを自ら生み出し、友達や保育者との対話を通して考えを深めながら、自分なりの答えを見つけていく姿が見られました。
自然との関わりの中で得た驚きや発見、収穫の喜び、育てる難しさ、そして食べ物や命への感謝は、子どもたちの「もっと知りたい」「またやってみたい」という意欲へとつながっています。
菜園活動は、野菜を育てることだけが目的ではなく、大地に触れ、自然と対話し、友達と喜びや気付きを共有しながら、自ら考え行動する力を育む学びの場となりました。一年間を通して積み重ねたこれらの経験は、子どもたちの未来につながる「生きる力」の確かな土台となったと感じています。
テーマ「ともに生きるいのち」
テーマの設定理由
子どもたちが実際に生き物と触れ合い、観察し、命の違いや不思議さを感じる体験を通して、生命への尊重や思いやりの心を育むことを目的に、本テーマを設定しました。また、「なぜ?」「どうして?」という子どもたちの問いを大切にし、探究する楽しさを味わえる活動を目指しました。
活動スケジュール
• 5月 移動動物園(フクロウ・ミミズク・ハリネズミ)
• 7月 移動水族館(ヒトデ・ネコザメ・ドクターフィッシュなど)
• 10月 第3回移動動物園(ヤギ・モルモット・ヘビ)
• 2月 第4回移動動物園(馬)
活動のために準備した素材や道具、環境の設定
動物や魚に安全に触れられるスペースを確保するとともに、飼育員による解説やクイズを取り入れ、子どもたちが疑問をもち、観察しやすい環境を整えました。動物との距離や触れ方にも配慮し、一人ひとりが安心して体験できるよう環境設定を行いました。
活動の内容
年間4回、それぞれ異なる動物や海の生き物と触れ合いました。見た目や体のつくり、感触、動き、食べ物などを観察しながら、「どうして違うの?」「どんな暮らしをしているの?」と、生き物への興味や探究を深めました。実際に触れたり、餌をあげたり、乗馬を体験したりすることで、生き物をより身近に感じる機会となりました。
活動中の子どもの姿・声、子ども同士や保育者との関わり
「フクロウとミミズクはどこが違うの?」「ハリネズミはなんでトゲがあるの?」「ヘビは冷たい!」「モルモットはあったかいね」「馬の背中は固いけど、たてがみはふわふわ!」など、多くの気付きや発見が見られました。子どもたちは友達同士で感じたことを伝え合い、保育者や飼育員との対話を通して、生き物それぞれの特徴や命の違いについて理解を深めていました。
振り返りによって得た先生の気づき
実際に「触れる」体験は、図鑑や映像では得られない多くの気付きや問いを生み出していました。保育者がすぐに答えを伝えるのではなく、子どもたちの「どうして?」を受け止め、一緒に考えることで探究が深まりました。一年間を通して様々な生き物と出会ったことで、子どもたちは命の違いや多様性を自然に受け止め、「ともに生きる」というテーマを実感できる活動となりました。